「普通借家契約」と「定期借家契約」の違い知りたい。
こんなテーマに関する記事です。
賃貸住宅やテナントを借りる場合は、その賃貸契約の種類として、「普通借家契約」と「定期借家契約」があります。それらは、契約内容に大きな違いがあります。その違いについてわかりやすく説明しています。
賃貸物件を借りる際の、
契約の種類
として、
「普通借家契約」と「定期借家契約」
の2つの種類があります。
では、
貸主、借主の立場
からみると、どちらが良いのでしょうか。
物件を貸す側(貸主)の視点で見ると、
「定期借家契約」;貸主側にメリットのある内容(借主には、不利)
「普通借家契約」;貸主側に不利な面がある (借主には、有利)
ということが言えます。
以下に、順に説明します。
「定期借家契約」の制度の経緯
定期借家制度は、
平成12年3月1日から、施行
された制度です。
それまでは、不動産の賃貸借契約は、普通借家契約のみでした。
定期借家制度が、どのような経緯で施行されるにいったかを整理しておきましょう。
「定期借家契約」制度ができた背景
従来の借家契約(普通借家契約)では、
建物の賃貸
の際に、貸主は、基本、
「正当事由」
がなければ解約や賃借人からの契約の更新を拒むことができませんでした。
このことが、賃貸物件を経営していく上で、契約期間の不確実性などの経営上の問題を内在することになっていました。
慣習としても、法的にも、従来の借家契約(普通借家契約)は、
借主に有利な内容
となっており、その他の選択肢がないという状況だったわけです。
この点を改善する為、
「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」
が平成11年12月9日に成立、同月15日に公布、平成12年3月1日に施行され、借地借家法の改正による
定期借家制度(定期建物賃貸借制度)
が導入されました。
つまり、
これまで、貸主側に不利な内容だった状況
を改善する為にできたのが、
定期借家制度
ということになります。
定期借家契約にするかどうかは、貸主の判断
もちろん、現状においても、従来の、
普通借家契約
での契約でもOKです。
ですので、状況に応じて、「普通借家契約」あるいは「定期借家契約」のいずれかの契約を取り交わすことになります。
ただ、どちらの契約になるかは、実際は、
貸主が決めること
になります。
ですので、借りる側としては、
定期借家契約の特徴(デメリット)を把握
した上で、契約の取り交わしを行うことが大切になります。
「普通借家契約」と「定期借家契約」の違い
「普通借家契約」と「定期借家契約」の違いを簡単に言うと、
「普通借家契約」
・契約の更新を前提にした契約
・貸主からの解約は、正当な理由が必要
「定期借家契約」
・契約期間の満了をとともに、終了する契約
更新する場合は、新たに、契約を取り交わす
・契約を終了する際に、貸主の正当理由は不必要
となります。
ただ、
「普通借家契約」
には、下記の2種類があります。
・期間の定めのある契約
・期間の定めのない契約
同様に、
「定期借家契約」
にも、下記の2種類があります。
・中途解約の特約が有る場合
・中途解約の特約が無い場合
ちょっと細かい内容になりますが、それぞれの種類によって、ルールが異なってきますので、下記に説明します。
「普通借家契約」
期間の定めのある契約
期間の定めのある契約のルールとしては、下記になります。
・特約が無い場合は、基本、貸主からの解約はできない。
・特約で中途解約ができることを定めても良い。
・但し、特約があっても、貸主からの解約申入れには正当事由が必要。
期間の定めのない契約
期間の定めのない契約のルールとしては、下記になります。
・テナントの借主からの解約申入れはいつでも可能。
但し、貸主からの解約申入れには正当事由が必要。
補足
期間の定めのある契約と期間の定めのない契約のいずれの場合も、
貸主からの解約申入れには正当事由が必要
となります。
また、通常は、
期間の定めのある契約
においては、契約満了後に、自動更新する旨の特約を記載することが一般的です。
自動更新の際の条件についても、注意して確認するようにしましょう。
「定期借家契約」
定期借家契約は、上記にも記載しましたが、期間満了により終了することを前提としており、更新したい場合は、改めて、契約の取り交わしを行って対応することになります。
また、定期借家契約については、契約書を作成して締結する必要があります。
さらに、
事業用の定期借家契約は、必ず公正証書によって作成する必要
があります。
(住宅用の定期借家契約に関しては、公正証書は、必ずしも必要ではありません。)
中途解約の特約の有無については、下記内容となります。
中途解約の特約が有る場合
貸主およびテナントの借主は、中途解約の特約に従って解約を行うことができます。
事業用の場合は、通常、3~6ヶ月前の通知が必要とされます。
また、貸主からの解約申入れには、6ヶ月以上の予告期間が必要と考えられ(借地借家法第27条、第30条)、正当事由もが必要(借地借家法第28条、第30条)とされます。
中途解約の特約が無い場合
事業用の賃貸借の場合は、原則として、貸主、借主ともに自らの都合による解約はできないとされます。
補足
実際の運用上は、
中途解約の特約
をつけるほうが、貸主、借主の双方にとって、リスクが軽減されますので、中途解約の場合の条件を特約で入れるようにしましょう。
但し、定期借家契約における中途解約の特約がある場合でも、
貸主からの解約申入れの場合は、正当事由が必要
とされます。
貸主が安易に解約の申入れをされると、借主も困ってしまいますので、その点は、正当事由を条件にすることで、考慮がなされています。
さいごに
貸主側としては、状況に応じて、
普通借家契約と定期借家契約
の違いを把握した上で、選択することになります。
また、借主側としては、
定期借家契約の場合、契約満了に伴い、退去する可能性がある
というリスクがあるということを認識しておく必要があります。
特に、事業用物件の場合で、契約期間が短いケースの時は、注意が必要となります。
上記の点を踏まえて、契約の取り交わしを行う前に、契約の種類を含めた契約条件について、納得のいくように調整を行うことが重要になってきます。
また、下記リンク先に、国土交通省の「定期借家契約」に関するガイドブックがありますので、参考になります。(PDF)
以上、「普通借家契約と定期借家契約の違い」についての説明でした。